にこやかに談笑する相手に、きっと平気で銃を向けるのだ、彼は。
分かっている。とてもではないが、心から信用できる国ではない。
だが、何と言おうか。
「いつも身構えるよね、僕と話すとき。」
「ご不快でしたら、申し訳ありません。」
「ううん、全然気にしてないからね。」
そういいながら浮かべる笑みはなんとも柔和なもので、目の前の彼はどう見ても優しげな青年だ。
その笑みを皆、空恐ろしいと言う。
確かに信用できぬ笑みだが、ああ、何と言おうか、違うのだ。
「僕が怖い?」
「いいえ。」
問う声に、何故か切なさを感じる。
即答してやれば少しばかり驚いたような顔でこちらを見ていた。
そう、恐ろしいのではなくて。
残酷凄惨なかの国の歴史を知りながら、しかし私は彼を小さな子供のようだと感じる。
「ロシアは冷淡で、信用ならぬ国です。」
その言葉に目の前の彼は深く笑みを浮かべたが、私からすれば滑稽なほど悲しい顔だ。表情には聡い。
「けれど、「貴方」は怖くありませんね。」
おおきな子供は首をかしげる。まったく、物分りの悪い事だ。
「「イヴァンさん」は怖くないと申し上げているのです。」
真ん丸に開かれた瞳の、灰色のような薄い青がひどく美しいと思った。
泣きそうだな、泣かなければいいのだが。
そう思っていたら抱きつかれていた。
不思議と羞恥はない、それこそ子供に飛びつかれた親の気持ちだろうか。
「冷たい?」
「ひんやりとは。不快ではありませんね。」
「そう。」
ああ本当におおきな子供。
「暖かいところが欲しいんだ。」
「ええ。」
「一人は寒いもの。」
「ええ。」
「でもやっぱり一人なんじゃないかなって。」
ぐいと体を押して顔を見れば、繕いきれていない笑みだが涙は無かった。
よかった、泣いていない。
「そうでもないでしょう。世界は広い。」
「嫌でも居ますよ。皆も、私も。」
薄青に、緩やかな光が見えた。
「やっぱり日本君欲しいな。」
「それはご免です。」
「でも居てくれるんだ?」
「ええ、まあそれは。」
「ホントお人よしだね。」
「ほっといてください。」
ゆっくりと彼の手に触れたが、思ったよりも暖かかった。
抱きつかれて、触れ合ったところから熱が移っていく。
私をすっかり隠してしまう大きな体は、少しずつ少しずつ暖かくなっていく。
「ただの「貴方」は、嫌いじゃありません。」
子らにするように背中をポンポンと叩けば、そのおおきな子供はかじりつく様に抱きついた。
遅れに遅れてやっとリクエスト消化始めました。
1万HITありがとう御座います。
リクエスト第一弾「お互い相手のことが本当は好きな露→→←日」です。
むしろ「孫の露を可愛がる祖母の日」になった気が。しょっぱなからそれか。
すいません弓井さま…こんなんですがどうぞお納めくださいませ。