声をかけたのは本当に単なる気まぐれであった。
…否、多少の腹立たしさがあったことは認めよう。

経済力、発展性、国としての力だけ見れば、十分世界とやりあっていける国だ。
それがどうだ、押されれば押されただけ引き、押し返す事も無い。
国の文化だと言われれば頭ごなしに否定は出来ないが、誉れた態度ではあるまい。

東方の島国一つ、どうなったところで我が国に大きな影響はあるまいが。
西欧諸国やあの若造の言いなりにさせるのも面白くない。


「日本、お前に伝えておかねばならん事がある。」


何とも感情の読みにくい無表情で、黒髪の国はこちらを向いた。










予想もしていなかった。

打ち出された弾丸はそのどれ一つも的を外すことなく撃ち込まれていく。
一切無駄の無い動きですばやく弾丸を装填し、また撃つ。
銃声は絶え間なく響き、ものの数秒で立てられた標的は全て使い物にならなくなった。

薬莢がからん、と小さな音を立てて落ちる。
日本は銃を持つ腕を下ろし、そして微動だにしない。


静かだ。


銃は下ろされたのに、この場所の空気は恐ろしいほどに張り詰めている。
銃声に鳥は逃げ、さえずる声も聞こえない。
二人だけのこの空間は、何故か底冷えするほどの恐怖をはらんでいる。





標的の板が大きな音を立てて崩れた。





「すいません、やりすぎましたか。」
はっと日本を見やると困ったような笑顔でこちらへ問うている。
いつの間にであろうか、あの緊張感は消えうせていた。
「…否、問題ない。見事なものである。」
「有難う御座います。」
お世辞でもなんでもなく、ただ事実を述べた言葉に日本は丁寧に礼を述べた。

まったくもって不可解は増すばかりである。
これが本当に敗戦国の力か。ここまでの力を持ちながら、何故。
それを振りかざせば多少なりとも噛みつけようものを。
考えても一向に理解できない日本の真意を問うべきであろうと、目の前の島国を見やる。


「久しぶりでしたので、少々不安だったのですよ。」
とんでもない方向に撃ってしまったらどうしようかと、と冗談めかして微笑んだ。



その微笑は驚くほど柔らかい。





(…無理である。)
この国には無理だ、一瞬で理解した。






「…次ははっきりと自分の意思を叩きつける物言いを覚えるのである。」

せめて言葉ぐらいは持っていろ。世界に飲まれぬように。

「ど、努力いたします…。」






一転、引きつった笑みを浮かべた日本に、気付かれぬよう小さく笑う。
感じるものは腹立たしさでもなく、不可解さでもなくなっていた。











黄金期間リクエスト「瑞日」です。
なんか米日と傾向似てる気がしてならない。早くもネタ切れか。だめだ。
リクエストしてくださった方、真に有難う御座いました。