01. 君は知らない(露)

君は知らない、僕らの醜さも浅ましさも。
この世は決して美しく楽しく素晴らしいだけのものではない。
裏切って騙して蔑んで殺して。
君は知らない、きっとそんなもの全て。

知らずにのこのこ出てきた世間知らず。君が悪い。
だからいつもどおり。
温和に冷徹に笑みを貼り付けて銃口を向けるよ。



らしくないね。


もしも君が知らないままでいられたなら、どんなに素晴らしかっただろうなんて。








02. 助けてよ(伊)

助けてよ助けてよ。
俺を?違うよ、そりゃ助けて欲しいけど。
皆を?それはそうだけど、そうじゃなくて。
敵を、味方を、誰を。


この全てから助けてよ、世界はどうしてこんなに悲しいの。



ほろほろとこぼれる涙をぬぐう事もしないで、眠れもしないのにシエスタ。








03. 貴方の横顔(日)

貴方はすぐ隣に。
そう、隣にいるのに誰よりも遠いのだ、今となってはもはや。


いつも見る貴方の横顔は凛とし、それはもう酷く美しく尊く気高い。




つまるところ、この瞳が重なり合う事は無い。








04. 枯れてしまった花(米)

手折る花ではないと渋っていたのを、無理を言って持ってきたのに。
やっぱり枯れてしまった。
薄桃色の素晴らしい花だったのに。
茶色くかさかさに乾いた花弁が机に散らばっている。

手に入れたいという衝動には、必ずいつも二度負ける。
一度目はその衝動を抑えられない事。
二度目は衝動をかなえた途端に感じる虚しさ。


また負けそうだ。
自嘲気味に唇を歪ませて、枯れてしまった花をゴミ袋に放り込んだ。








05. 何もわからなくなる瞬間(仏)

何もわからなくなる瞬間は、引き金を引く瞬間。
だってそうだろう。
この無粋な金属の筒から飛び出す破片は、命を奪うのだ。

なにもわからない。
白百合の美しさもタルトの作り方も愛した人も正しさも自分も。


わかっているなら、この引き金、引けるわけが無いじゃないか。


だから引き金を引く瞬間、俺は何もわからなくなる。








06. 君の涙を拭いたいのに(中)

綺麗だ。不謹慎だが許しておくれ。
泣いてくれるなんて、思いもしなかった。

どれだけ憎みたいと思っても、それを表層で演じても。
結局は無駄な事。憎しみなどこの根底に染み込む余地すらないのだ。


もう、いい。


そう言って君の涙を拭いたいのに、もはや我にその資格は無い。








07. 手を伸ばしても(英)

どれだけ手を伸ばしてもとどかない。
光と駆けるユニコーンは、いつからだろう、もう見えない。
ああきっと血にまみれて消えたのだ。

輝いた昔はだが所詮過去だ。
もう戻らない。もうとどかない。

失ったものは大きいのに、きっと得るものは無い。
そうだ、それこそ、どれだけ手を伸ばしても。
この手は何も掴まない。








08. 世界はこんなにも残酷だ(独)

不条理で不平等であまりにも酷い世界だ。
これが全てだというなら、神とは何処に居る。

そしてその世界の一部は間違いなく俺なのだ。
戦戦戦戦。
この手は何度銃を握った。

世界はこんなにも残酷だ。
どれだけ愛しく想っても、ただただ傷付けて終わる。
この身が世界である限り。








09. もう止めよう



それを誰が望まずに居られようか。








10. それでも僕等は

戦うのだ。この身消えるまで抗いはしない。
なんて茶番だろう。

何も知らずに居られればよかったのに。
助けなど必要ない世界だったなら。
瞳を見つめられただろうか。
花は美しく咲いただろうか。
引き金から指を外して。
泣かないでいられた。
この手に何かをつかめた。
世界はこんなに残酷じゃないはずだった。


それでも僕等は。











拍手第三弾でした。
戦時中独白風味。これもどれが誰かは書かずに載せてました。
honey?さま(http://coxx.nobody.jp/):切ない10のお題