祖国から、とおい、とおい所で眠りについた人がいた。






墓石に刻まれたアスクレピオスの杖は、ここに眠る人そのものだ。
誰もが見捨て、目を逸らした中で彼はそれこそ神の如く人々を救った。

彼の遺族が桜を送ってくれた。春になると見事に花を咲かせる。


(桜は、あの国だ。)


あの国の民は、どうして皆あんなにも優しいのだろう。
他者を叩き、己に固執する。
むしろそんな自分達がおかしいのだろうか。
第一次大戦の記憶は褪せる事がない。


(国の気質、か。)


他人に傷を負わせず、己の傷は見もしない。
他人を慈しみ、己を叱咤する。

誇りを失わず、しかし決して驕り高ぶる事はない。


(国そのものだ。)


彼の国が愛する民は、彼の国を愛してやまないのだ。


ここに眠る人も、誇り高い人だった。
あの国のように。








菊の花を供える。
事情を話すと、彼の国は快くその花を届けてくれた。


「Ja,der Geist spricht,das sie ruhen von ihrer Arbeit;denn ihre Werke folgen ihnen nach.」



貴方の行いは報われた。
この現世で、幾人の人々が貴方の行いに救われただろう。




どうか安らぎを。貴方に安らぎを。








俺の愛する民を、救ってくれた貴方に。














菊の花言葉 高潔








肥沼信次氏に深い尊敬と敬愛を。