まず目な。
真っ黒で鉱石みたいに艶かしく光る。
きょろきょろ動く。小動物みたいだ。
そのくせ、話す時には真っ直ぐこっちを見てきて動かない。
吸い込まれそうになる。


うん、綺麗だ。


つぎは髪。
これもまた真っ黒でな、あー、なんだっけ、そう、「カラスノヌレバイロ」。
さらっさらのストレート、枝毛ゼロ。素晴らしいねこりゃ。
風が吹くたび揺れる。
ふわりといい香りがする。


ああ、美しい。


仕草もいい。
お辞儀、よくやるよな。ちょっとやりすぎじゃねぇ?
いや、良いんだけどな。ゆったりしたあの動き、俺好きだわ。
あと、何だっけか…あー、ノレン?あれくぐる時の仕草良いよなぁ。
こうちょっと片手あげて、キモノの袖押さえてさ。ぐっとくるよな。


Merveilleux!







「言ってて恥ずかしくなりませんか…。」
「全然。」
呆れたように日本が言う。午後の日差しに照らされた日本はやはり綺麗だ。
「だって本当のコト言ってるだけだしなー。」
笑いながらエスプレッソをぐいと飲む。
以前日本にも同じものを出したが、口をつけた途端に何とも苦しそうな表情を見せた。苦かったらしい。
それ以来、日本にはカフェオレを出す。どうやらこちらはいたく気に入っているらしく、なんとも旨そうに飲んでくれるので作った側としては嬉しい限りだ。

「西欧の方の物言いは、あけすけ過ぎではないですか。」
「アケスケ?」
「はっきり言いすぎ、ということです。」
また一つ日本語のストックができた。
「あけすけ過ぎるのは、野暮というものですよ。」

なるほど、目の前の彼が話す言葉は回りくどいものが多い。相手に意味を「汲んでもらう」話し方だ。

(アメリカにイタリアにあの眉毛は、言葉のままを受け取る。)

(ジャガイモは?…多少マシだが、汲んだ後が続かない。)

想像すると分かりやすい。それは西欧にはあまり馴染みの無い文化だと思う。

(野暮、ね。)

でもなぁ。



じっと見つめる俺の目を逸らさず見つめてくる鉱石。

小首を傾げるのにあわせて揺れる絹糸。

少し大きめのボールに注がれたカフェオレを両手で持って飲む姿。






「日本。」

「はい?」

「綺麗だ。」

視線をすい、とも外さず真顔で言い切れば、彼は目を見開いて途端に赤面する。
何か言いたげに口を動かしていたが、結局言葉にならないまま俯いてしまった。

「あと可愛い。」

真顔を崩してにへら、と笑った俺に、日本は俯いたまま「…ありがとう御座います。」と返した。
精一杯なんだろうなあと、真っ赤に染まった耳を見てまた一人笑う。


「嫌か?」
「…何がですか。」
「アケスケなの。」
「………嫌ではないです。」








ああなんて幸せな午後。






手を伸ばして漆黒の髪を撫でると、日本もやっと小さく笑った。








ドイツ、イギリス相手だと、どうしても日本が年寄りになってしまいます。
仏兄さんだとちょっとは可愛く…なった…のか…?
一番「大人の距離間」と「汲む」事に長けた人で無いかというイメージが。
でも色事師の仏は大好物です。どっちなんだ。