仕事を終えてふと空を見ると、既に日は大きく傾いていた。


夕日に照らされるこの時間が、とても嫌いだ。
人々の活気あふれる霧の都はゆっくりと静けさを増していく。
落ちていく太陽に呼応するかのように、喧騒が引いていく。

(騒がしいのは、好きじゃないが。)

静かすぎるのは、もっと好きじゃない。


ぼんやりと外を見る。
街は紅く染まり、美しくて何故か悲しくなった。
昔からこの時間は嫌いだった。


皆、帰っていく。
暖炉の暖かさ、家族の微笑み、子供達のおかえりの声。


この時間になると、酷く心細くなる。それは焦燥に似た思い。
取り残されたような、取り残してしまったような、何ともいえない憂いを感じる。


部屋が酷く暗い事に気付く。
夕日はもう殆ど沈んでいた。あっという間に空を飲み込む夕闇。
空はその色を目まぐるしく変える。
紅を静かに侵食する黒を、じぃっと見つめた。


そこに、遥か遠い麗人を想う。


湧き出た感情はなんとも甘美で、それこそ夕闇のように憂いを飲み込む。
静かで、それでいてあまりに強く自分を引きつける。



(ああ、)



(会いたいな。)




何をするでもなく、何を話すでもなく。
ただ会いたいと思った。

素晴らしく青臭い自分の心情に、はっと赤面しながら慌てて机に目をやる。
乱雑に積み上げられた書類を整理し、放り投げられたペンをペン立てにさそうと手に取ったその時だった。



時計塔の鐘が時を告げる。



その音は深く深く、自分の核たる底に響く音。
自分を引きつけてやまない存在。








まるで鐘の音のような人。

己の考えに再び赤面しながらも、明日が休みである事を誰とも無しに感謝した。











短い。
日本は影も形も出ていない。
いろいろ駄目だ、私。